SecondSourceAI産業の「判断」を届ける夕刊ブリーフ

夕刊 SecondSource 夕刊・2026/8/24 · 2026年8月24日

NVIDIA が AMD をどれだけ引き離しているのか、外部が再実行して確かめられる公開の計測が今日はじめて出た。いちばん澄んだ分かれ目は計算の速さではなく、AMD に一世代ぶん欠けていた一本の API だ

今号の要点

1. NVIDIA と AMD の差について、外部が再実行して検証できる公開の計測が今日はじめて出た。分かれ目は計算の速さではない。AMD に一世代ぶん欠けていた一本の API になる。

2. どちらも本物の数字なのに、並べると偽の結論が育つ。本紙は今日、いちばん魅力的なその読みを収めない。理由は分母が揃っていないことだ。

3. 上流でいちばん安い基板の材料が三年あまりぶりに値上げされると伝わり、いちばん多く投資している後工程のメーカーは、足りないのは金ではなく工期だと言っている(伝聞の水準)。

今号の材料は、本紙 8 月 24 日の日報から来ている。出来事の日付は 8 月 21 日から 8 月 24 日のあいだに落ち、いちばん新しい一件が今日の未明にあたる。昨夜の定例で 192 本をさらい、今号に残ったのは、リンクをたどれる外部の領収書 16 件になる。

今日の中核

1.[今日] 同時実行数が 20 を超えたあと、NVIDIA 側はいちばん安上がりな構成がどれも会話のキャッシュを外へ退避させている。AMD 側は一つもない

SemiAnalysis は半導体と AI インフラを扱う独立の調査機関で、創業者は Dylan Patel、チップのサプライチェーンとデータセンターの原価モデルを解きほぐす仕事で知られる。今日の未明、同社は自前の計測基盤 InferenceX の上で AgentX 1.0 を公開した。「エージェント型のコーディング」の推論性能を測る公開プラットフォームになる。エージェント型のコーディングとは、モデルを助手のように何十回も何百回も往復させ、自分でファイルを読み、書き換え、テストまで走らせる使い方を指す。Claude Code のような端末上のコーディング道具がその典型にあたる(SemiAnalysis、08-24)。

なぜ測り方を替える必要があるのか、から書く。 これまでチップの AI 性能を比べるときは、入力の長さも出力の長さも固定して並べていた。ところがエージェント型の流量はまるで形が違う。n 回目の入力は、n-1 回目の出力をそのまま継ぎ足したものだ——だから中身の大半は前の回にすでに計算し終えている。モデルが文章を読むときに出た途中の状態は保存しておけて、次はもう計算し直さずに済む。この保存されたものを業界では KV キャッシュと呼ぶ。つまり「すでに計算したもの」の物理的な姿にほかならない。 残せば安くなり、残せなければ丸ごとやり直しになる。残った割合がキャッシュ命中率だ。

計測の結果でいちばん澄んだ分かれ目はここにある。同時に相手をする利用者の数が 20 を超えると、NVIDIA 側は「いちばん安上がりな」構成がどれもキャッシュをメインメモリへ退避させている。 ビデオメモリは高くて小さく、メインメモリは安くて大きい。入りきらなければ外へ出す。業界ではキャッシュ退避と呼ぶ。一方の AMD 側では、いちばん安上がりな構成のなかに退避を使うものが一つもない。 原文の書き方はきわめて率直だ——「All of Nvidia's Pareto optimal points include KV offload above concurrency 20, but for AMD none of the Pareto optimal points use KV offload to DRAM.」(「いちばん安上がりな構成」は原文のパレート最適点にあたる。同じ速度の要求を満たすなかで最も割に合う配り方を指し、一つの数字ではなく構成の集まりになる。)

原因は AMD が選ばなかったことではなく、プラットフォーム側の部品の欠落にある。 細かい転送を何度もまとめて一度の大きな転送に片づける API(`hipMemcpyBatchAsync`)が、AMD のソフトウェア基盤 ROCm では 7.14 版まで存在しなかった。それまでは一件ずつ運ぶしかなく、退避したほうが退避しないより遅い。だからいちばん安上がりな解は全部「退避しない」側へ引き返す。今日の読み取りが捉えたのは、その API が埋まる前の状態になる。埋まったあとに結果が変わるかどうかは、7.14 がどこまで実配備に広がるか次第だ。堀が破られたのは計算が遅いからではない。欠けていた一本の API のせいである。

検証: これは単一のソースであり、しかも計測した当人が自分の計測を報告している。第三者の再実行はまだない。利害も一緒に書く。SemiAnalysis は AMD と何年も助言のようなやりとりを続けてきたと自ら述べており、NVIDIA、vLLM、SGLang の各チームとも互いに謝辞で名前を挙げ合っている。この計測そのものが業界の風向きを左右しうることも、強く気にしている。反対向きの材料としては、双方に対して名指しの批判をしている点が挙がる。本紙は今日、「何を公開したか」と「何を計測したか」を二つの別件に分けて調べた。 前者は当日のうちに確かめ、公開したと言っている面はたしかに果たされているという結果を得た。結果のページは誰でも読め、コードは GitHub で 1,463 個の星が付き、公開の API も一覧になっており、計測は毎回 GitHub Actions の上で走ってログが全部公開されている。再生に使う本物の Claude Code の対話の軌跡も HuggingFace(モデルとデータセットを公開する場)に上がっていて、ライセンスは Apache 2.0 だ。他人がほんとうに持ち帰って解体できる。もう自己申告だけではないInferenceX の公開基盤)。まだ裏の取れていないものが三つある。構築に 300 万米ドル余りをかけたという自称、およそ 2 メガワットと 1,000 個を超えるチップの上で動いているという規模、すでに複数の一線の研究所が使っているという主張。この三つは当人が言っているだけになる。この記録に対する本紙の内部確信度は、それを受けて 0.7 から 0.8 へ上げた(満点は 1)。成果物の面は十分に硬いが、規模の自己申告は誰も確かめていない、という意味になる(採点の方法)。

判断更新: 本紙は 7 月 25 日の号で一つの判断を書いている。NVIDIA のソフトウェアの壁は崩れていない、引っ越しただけだ——チップ一枚に載るコードの品質から、「何百枚ものカードをどう即座に協調させ分担させるか」へ移った、という判断になる。同じときに、それを覆す条件も書き留めていた。AMD が主要な最適化のいくつかを、既定のオープンソースのソフトウェアのなかで確実に組み上げられるようになれば、この判断は覆る。 ただしこの条件は本紙の内部記録に残っただけで、あの号の読者面には書き出していない。今日ここで併せて出しておく。当時のあの判断もやはり単一のソースから出たもので、本紙は低い確信度で記録していた。一か月後の今日、計測がその条件のうち「キャッシュ退避」の一項について、はじめて公開の読み取りを与えた。AMD 側はいちばん安上がりな構成にすら乗せられていない。覆す条件は発火していない。 それでも本紙は今日、「原判断を維持」とだけ書くことをしなかった。それでは一年後もこの判断は同じ一文のままで、賢くならない。やったのは絞り込みだ。 もとは最適化のひと籠を丸ごと指していたが、今日の数字は籠のなかの重みがひどく偏っていることを示す。二社をほんとうに分けているのは、キャッシュの生存期間にかかわる数項になる。絞り込みの代償は射程が縮むこと、見返りは判定の基準が変わることだ。「あなたのシステムは確実に組み合わせられるか」というきれいごとで答えられる問いから、二択で、調べがつき、相手が言葉づかいでかわしにくい問いへ移った。ある会社のいちばん安上がりな構成が、同時実行数 20 以上でメインメモリへのキャッシュ退避を使っているかどうか。 この一文は今日そのまま取引先にぶつけられる。推論の基盤を自前で立てている、あるいはクラウドの推論の裏側を選定している最中なら、相手の四半期のロードマップを待つ必要はない。この二択を一つ聞けばよい。新しい版を覆すのは何か。 ROCm 7.14 が普及したあと AMD のいちばん安上がりな構成が退避を使い始めたのに、二社の 1 ドルあたり性能の差が相応に縮まらない場合になる。そのときは今日の絞り込みの向きが間違っていたことになる。答え合わせの日は 9 月の半ばだ。公開した側は三〜四週間後に続報を出すと自ら述べ、AMD 側の性能改善を含めると予告している。もう一つの経路は日付こそないが影響は大きい。誰かが Apache 2.0 のあれを持ち帰って再実行することだ。

投資への含意: いまのナラティブは、AMD の追い上げを四半期ごとの進み具合で見る連続した曲線として置いている。この証拠が言うのは、追い上げの場所がもう移ったこと、しかも名指しの欠落部品とバージョン番号があって直接答え合わせのできる場所へ移ったことだ。「AMD は安定して差を縮めている」という仮定に対しては弱まる。「差の原因は外部から確かめられる」という読みに対しては強まる。ただし強まる幅は、今日それがまだ単一のソースであり誰も再実行していないことに縛られる。

2.[今週](出来事は 8 月 23 日)Anthropic の売上の数字と、旗艦モデルの採用率を並べると、偽の結論が育つ。本紙は今日、自分からそれを収めない

机の上に数字が二つある。一つ目。 FT(英国のフィナンシャル・タイムズ)が事情を知る人物の話として報じたところでは、フロンティア AI 研究所 Anthropic の 7 月の「年換算の売上」が 650 億ドルに達し、5 月は 470 億ドルだったので二か月で 38% 伸びた。同時に同社は投資家に、年 10 万ドル以上を使う顧客が 6,000 社あり、第 3 四半期は黒字を見込むと伝えている。本紙が読んだのは独立の開発者 Simon Willison による引用だ(Django の共同開発者で Datasette の作者、各研究所が出す売上の数字の系列を、長く公開で追いかけている)(simonwillison.net、08-23)。FT の原文は有料の壁の向こうにあり、本紙は逐語の全文を手にしていない。二つ目。 Ramp は米国の法人カードと支出管理の会社で、傘下 7 万社の実際の請求から、7 月の Anthropic 各モデルへの支出の分布を推計した。いちばん高い旗艦の Fable 5 はわずか 8.0% で、一年足らず前の Opus 4.8(28.0%)の三分の一に届かない(Ramp AI 指数)。

二つを合わせると、とても耳あたりのよい判断が立つ。売上を支えているのは中位のモデルで、旗艦は売れていない。 FT のあの記事の見出しの判断が、まさにこれになる。

本紙は自分から収めない。理由は分母が揃っていないことだ。 Ramp の母集団は、法人カードを切る米国の中小企業とスタートアップになる。ところが旗艦モデルの利用は、企業との直接契約、クラウドのマーケットプレイス経由の再販、大口の API の年間契約という三つの経路に落ちる見込みが高い。この母集団は、旗艦の主戦場をまるごと外している。 売上の数字の分母は会社全体、請求の指数の分母はロングテールの市場だ。二つは同時に真でありうるし、おそらく実際に同時に真だろう。だがそれを割り算すると、ロングテール市場のシェアで市場全体の売上を説明することになる。それは洞察ではない。分母の取り違えである。

検証: 一緒に持ち帰るべき留保が三つある。一つ目の留保は、証拠の経路が二段はさまっていること。 本紙が読んだのは引用で、FT の数字は事情を知る人物から来ている。次の留保はもっと重い。「年換算の売上」はある月を十二倍した会社の自己申告であって、監査を受けた売上ではない。 高速に伸びている会社では、当期の伸びを増幅する。同じ一本の曲線の上で、5 月の 470 億は Anthropic の公式のリリースから出た一次情報だが、7 月の 650 億は匿名の経路を通った伝聞になる。同じ図に打つ二つの点で、確からしさが違う。等しい重みで扱ってはいけない。 もう一つ先に言い切っておく。「第 3 四半期は黒字を見込む」の一文には、FT 自身が限定を付けている。 第 2 四半期の黒字を宣言したときと同じモデルを使っている、という限定だ。黒字になるかどうかは訓練の原価をどう割り振るか次第だという注意であって、裏書きではない。請求の表のほうにも、先に埋めておく穴が一つある。Opus 5 の 3.5% には意味がない。 7 月 24 日に出たばかりで一週間しかなく、その点は引用した本人が先に断っている。ほんとうに見る値打ちがあるのは、出てから時間の経った Fable 5 が 8.0% にとどまるほうだ。

判断更新: この一件はもう少し語る値打ちがある。本紙のこの一式の決まりが存在する理由そのものだからだ。どちらも本物の数字なのに、並べると勝手に偽の結論が育つ。しかもその偽の結論は、どちらの本物の数字よりも洞察らしく読める。 防ぐ線は数字を疑うことではない。毎回「この二つの数の分母は同じか」と問うことにある。この動作は今日そのまま持ち帰れる。「採用率は低いのに売上は高い」「利用者は少ないのに収入は多い」という並べ方を見たら、まずそれぞれの分母を一度ずつ問う。この判断を救い出す条件も書いておく。企業向けの経路を含んだモデル別の利用の内訳を手に入れること——事業者の開示でもよいし、母集団の違う二つ目の請求の指標でもよい。そのときに開き直す。

投資への含意: いまのナラティブは、第三者の請求指数を、モデルの採用率の代理として置き、その採用率をさらに売上の構成の代理として置いている。この証拠が言うのは、二段目の代理が切れている、ということだ。「ロングテールの採用率からフロンティア研究所の売上の構成を推し量る」というやり方は今日は立たない。本紙はそこへの確信度を下げる。逆に「どの代理の指標も、まず母集団を一度確かめる」というやり方は、今日また一つ手持ちの実例を得て、足場が固くなった。旗艦がほんとうに売れているのかについては、今日は答えが出ない。本紙も答えが出るふりをしない。

3.[今日] SemiAnalysis は「AMD のチップを無料で配っても、NVIDIA を使うほうが安い」と言う。この一文は本紙が七月に自分で収めた記録と正面からぶつかる。本紙は調停しない

今日の中核の第 1 項と合わせて読んでほしい。 同じ計測が、一つの閾値の読み取りも与えている。GLM 5.3(中国の智譜が出したフロンティア級オープンウェイトの大規模モデルで、重みが公開されていて自前で配備できるから、二社の基盤が同じものを走らせられる)の上で、「1 人あたり毎秒 150 字」というよくある対話速度の要求に固定すると、1 ドルあたりで買える性能は NVIDIA が AMD の最大 5 倍になる。ここでの計量の単位は原文では token で、本紙は字と訳した。文字どおりの漢字の字数ではない。原文は続けて、この差は大きいので、たとえ競合のチップのハードウェアが無料で配られたとしても(もちろん事業者は建屋と電力とその他の運営費用を払う)、一字あたりの原価は NVIDIA を使うほうが安い、と述べている(SemiAnalysis、08-24)。

この一文の値打ちは、比べ方を替えたところにある。 「どれだけ安いか」から「ハードウェアをゼロにしたら誰が勝つか」へ書き換えた。もし成り立つなら、その区間ではチップの売値はもう意思決定の変数ではなく、原価を決めるのはチップ一枚の背後で払う建屋と電気になる。ただし条件は一つも剥がせない。 このモデル一つ、この速度の点一つ、しかも双方ともオープンソースのソフトウェアで比べた場合に限る。同じ記事のなかで、AMD 自前のクローズドのソフトウェアは、別の区間ではむしろ NVIDIA の旗艦のラックに勝っている。この一文を持ち出して「AMD は全面的に望みがない」と語る人は、条件を抜き取っている。

検証: 単一のソース、単一の区間、そして本紙が七月に収めた記録と向きが逆になる7 月 25 日の号では、同じ機関の別の読みを扱った。AMD が最大 105% の株式によるリベート(リベートの価値が売値そのものを上回る)で受注を取りにいっており、その原価モデルによればラックの百万字あたりの原価は「ほぼ負の値」になる、という読みだ(SemiAnalysis、07-25)。同じ計測者、同じ原価モデルの立場から、一か月のうちに向きの逆の結論が二つ出た。

判断更新: 本紙はこの二つを互いに矛盾するものとして札を立て、代わりに調停はしない。二つは同じ硬貨の裏表かもしれない。七月のほうは AMD がなぜ補助金でシェアを買わねばならないかを説明し、今日のほうは補助金で買える射程に上限があることを説明する——打ち消せないのが建屋と電気になる。だが本当に排他かもしれない。 リベートの規模が建屋と電力まで覆うほど大きければ、今日のこの一条は覆る。二つを無理に一致させて語るのはたやすいが、代償は次に測り直すときにどちらが正しかったのか分けられなくなることだ。だから本紙は答えのない張力として残し、ROCm 7.14 のあとの測り直しを待つ。あなたが同じようにできる動作が一つある。 手元にある向きの逆な読み取りの組は、まず同じ物差しどうしが争っているのかを確かめてから、調停するかどうかを決める。

投資への含意: 強気も弱気も、それぞれ片方を方向の証拠として引いている。この衝突が言うのは、二つの物差しがそもそも重なっていない、ということだ。一方は特定の大口顧客との取引の構造を計算し、もう一方は特定のモデルと速度の点における一字あたり原価を計算している。「補助金は効率の差を長く相殺できる」という仮定に対しては弱まる。「効率の差は最後に、建屋と電気という打ち消せない原価の上に落ちる」という読みに対しては強まる。ただしどちらも、まだ結論を出せる段には届いていない。

そのほかに起きたこと

1. [今週](8 月 23 日)TSMC が 300 億台湾ドル(およそ 9.4 億ドル)で AUO(友達光電)のパネル工場二か所を買い取り、先進の後工程工場へ建て替える案があると伝わった。Largan(大立光)は共同実装光学モジュールの開発を終え、NVIDIA の光通信サプライチェーンに加わると伝わった——どちらも投稿した本人が伝聞と札を立てており、TSMC のほうは現地でのデューデリジェンスの段階で、まだ成約していない@dnystedt の TSMC の投稿Largan の投稿)。

2. [今週](8 月 23 日)データセンター産業の意見記事が、建屋のリチウムイオン電池による蓄電への依存がリスクの構造を変えつつあるのに防火の規程が追いついていない、と主張した。韓国の国家データセンターで昨年 9 月に起きた電池の爆発火災が 600 を超えるオンラインの行政サービスを止めた件を例に挙げている——これは意見記事であって報道ではなく、挙げられた事故を本紙はまだ一件ずつ確かめていないData Center Dynamics)。

3. [今週](出来事は 8 月 21 日)NVIDIA の B200 が三日のうちに AMD の MI355X を抜き返した。チップは一枚も手を加えられていない(SemiAnalysis、08-24)。⚠️ この一件は今日一行しか置けない。細かいところは、前に挙げた原文のリンクを見てほしい。

チップと半導体

[今週](投稿日 8 月 23 日)上流でいちばん安い基板の材料が三年あまりぶりに値上げされると伝わり、いちばん多く投資している後工程のメーカーは、足りないのは金ではなく工期だと言う。

Dan Nystedt はアジアの半導体サプライチェーンを追う記者で、TriOrient のアナリストでもある。台湾の中国語経済メディアが出すサプライチェーンの報道を、X で長く伝えてきた。その日は何本か投げている。一本目。 シリコンウェハー——半導体づくりの出発点にあたる高純度単結晶シリコンの円板で、回路はすべてこの上に作られる。サプライチェーンのいちばん上流にある汎用の基礎材料になる——が 6 インチ、8 インチ、12 インチの全寸法で値上げされる見込みで、三年あまりぶりの大幅な引き上げにあたる。理由は、AI の需要がついに、長く余っていた供給を吸い切ったことだという(@dnystedt、08-23)。⚠️ 口径をよく見る必要がある。原文が書いているのは「個別の製品の価格はなお区々で、会社の売上への影響は平均販売価格の 10% 上昇が見込まれる」であって、一枚ずつが 10% 上がるという話ではない二本目。 台湾の後工程(実装と検査)大手五社が今年計上する設備投資は合計で 4,600 億台湾ドル、およそ 144 億ドルにのぼり、そのうち ASE(日月光、世界最大の後工程メーカー)一社で 3,350 億台湾ドル、およそ 105 億ドルを占める。ところが ASE 自身が言うには、いま最大の問題は、新設 13 件と改修 8 件の工事、装置の据え付け、生産の立ち上がりをどう速めるかだという@dnystedt、08-23)。三本目。 グラフィックスカードのメーカーはすでに第 3 四半期の売値を上げ、二度目の引き上げも検討している。ダイとカード用のメモリが同時に足りず、今期に使えるカードの総供給はさらに二割以上縮むと見込まれる。しかもいちばん激しく上がっているのは入門機と旧世代のカードだ——データセンターが奪っていった生産能力の請求書を、消費者側のいちばん安い層が払っている(@dnystedt、08-23)。

どう使うか。 三本を合わせると一つの方向を指す。上流の限界制約が、先端の製造工程から両端へ広がりつつある。上はいちばん汎用の基礎材料へ、下は消費者側へ。そして真ん中の一段のボトルネックは、もう資金ではない。この自己申告は、二年ほど使われてきた一本の推論の筋道を断ち切る。あるメーカーが何百億の投資を発表したら、そこから生産能力を推し量る、というあの筋道だ。いちばん多く金を出している当人が、自分のボトルネックは金ではないと言っている。 ⚠️ ただしこの三本は、同じ記者が同じ日に投げた伝聞であって、独立した三つのソースではない。本人が「メディア報道」と札を立てている。しかも台湾のサプライチェーンの記事は、メーカーがメディアを通して値段の交渉のために流す産物であることが多い。だから本紙が出す使い方は一段下げたものになる。この数本を第 3 四半期の決算説明の質問リストに足す——何件が着工したか、装置の据え付けの日程はどこまで来ているか、立ち上がりの曲線の前提は何か——のであって、いま生産能力の前提を下方修正するのではない。

目利きの読み

[今週](投稿日 8 月 23 日)実務の書き手が「ただ飯は終わった」と言う——そして本紙は今日、これを第 2 項のあの判断の証拠としては扱わない。

Drew Breunig はデータ戦略と AI 応用の分野で書く独立の書き手で、モデルの能力と実務の工学がどこで折り合うかを長く書いてきた。〈Fable & The End of the Free Lunch〉のなかで、彼はこう書いている。Fable の前は、自分のコーディングの外殻や文脈戦略を磨くのに力を注ぎすぎるのは割に合わなかった。新しいモデルがいつも同じ値段か、もっと安い値段で出てきて、抱えていた問題の大半を上書きしてしまうからだ。ところが Fable が実務へ降りてくると、たしかに強いのに原価が高く、彼のチームは「どの仕事をどこへ送るか」を考え始めた。一段安いモデルでも、自分たちのコードの大半には十分だからになる(dbreunig.com、08-23。本紙は Simon Willison の引用のページを通して読んだ)。

収める理由と、それが証拠ではない理由。 これは今日の中核の第 2 項に出たあの 8.0% に、一つの機序の説明を与える。売れていないのではなく、高いので、仕事を階層に分けて別々の値段のモデルへ送る値打ちが出た、という説明だ。「旗艦は失敗した」よりずっと精度の高い読みになる。だが一人の、一つのチームの一人称の経験であって、計測はゼロ、母集団は市場ではなく一つのチームでしかない。 だからこれは、本紙が退けたあの判断を証明もできないし反証もできない。本紙はこれを一つの言い分として扱い、証拠としては扱わない——この分け方こそ、第 2 項が語っているのと同じことになる。コーディングの助手のような製品を作っているなら、彼のやり方それ自体が、自分で検算できる動作にあたる。仕事を難しさで階層に分け、どの層を旗艦へ、どの層を一段安いモデルへ送るかを試算する。ただしこれは一つのチームのやり方であって、本紙の勧めではないし、本紙が実測して得た結論でもない。

モデルの読み

[今日](公開日 8 月 24 日)長く使われてきた標準的な最適化が、今日のような流量では、キャッシュ命中率を理論値 96.0% から実測 28.8% まで落とした。

同じ計測のなかに、そのまま真似できる内容が一段ある。DP-attention は注意の計算(文のなかでどの語どうしが関係するかを判定する段階)を「データ並列」で切り分ける最適化で、一往復の固定長の場面ではたいてい得になる。ところが長い文脈の多往復の流量では、正から負へ転じる。MiniMax M3 というモデルの上では、同時実行数 40 のときスループットが有効にしない場合の六割まで落ち、最初の一字が返るまでの時間(送信を押してから最初の一字が見えるまで)は三倍以上に悪化した。同時実行数 32 のときのキャッシュ命中率は実測 28.8%、理論値は 96.0% になる。⚠️ この二組の数字は同時実行数の点が違う(40 と 32)。同じ一回の計測の二つの欄ではない。機序ははっきり書かれている。計算の単位はそれぞれ、キャッシュ領域の四分の一を私有するだけだ。30 万字の会話が次に別の単位へ割り振られれば、その一段はまるごと計算し直しになるSemiAnalysis、08-24)。

そのまま持ち帰れるものが二つ。 一つ、先にキャッシュ命中率を測り、それからスループットを見る——命中率が崩れていれば、あとのスループットの数字はすべて無駄な計算になる。二つ、メインメモリへの退避をやるなら、メインメモリの容量は、ビデオメモリ側のキャッシュ容量よりはっきり大きくしておく。書き込みのときに同時に複製する設計だからだ。ビデオメモリへ書いたぶんは、同時にメインメモリへも書かれる。足りなければ、開いていないのと変わらない。どれだけ大きくするかについて、計測した側が出した目安は 1.5 倍から 3 倍で、原文はこの幅の両端をどう出したのか説明していない。⚠️ どちらも今日のこの単一のソースの計測から出ており、第三者の再実行はない。なお、本紙が今週さらった学術論文のなかに、単独で書く値打ちのある新しいものはなかった。この段に今号は新しいものがない——常緑の概念をニュースに見せかけることはしない。

プロダクト動向

本号にプロダクト動向はありません。 ここ 48 時間、プロダクトの会社からの新しい記事がない。そして本紙は、すでにある製品の機能の紹介をニュースとして扱わない。

過去の洞見

本号に過去の洞見はありません。 振り返りに回せる古い素材は使い切った。すでに出した条目を流し直すくらいなら、本紙は空けておくほうを取る。

ソースと棚卸し

過去 24 時間。 昨夜の定例で 192 本を取り込んだ。内訳は学術論文が 109 本、X の 77 個のアカウントのその日の投稿、会社と個人のブログが 3 本、業界の電子版の便りが 3 本になる。ここで先に言っておく数字が一つある。 本紙の自動集計は、今日 6 本としか出さなかった。昨夜の大量入荷を「古い資料の後追いの取り込み」と誤って判じ、186 本が当日の数字から消えて 6 本だけ残ったからだ。だがこの 186 本は昨夜の正常な産出であって、後追いではない——本紙はここで実数の 192 を使い、この誤判定を直すべき項目として挙げた。数字を黙って書き換えることはしない。この 192 本のうち、この 24 時間で実際に判断にかけたのは 4 本、規則に合わないとして外したものは一件もなく、残る 188 本はまだ読んでいない(あの 186 本は一本も減っておらず、判断を待っている)。判断にかけた 4 本のうち 3 本を帳簿に収め、1 本は信号がないと判じた——人工知能の政策研究者のアカウントで、その日の投稿は二本、一本は英国の料理の話、もう一本は焼いたじゃがいもだった。産業の中身が何もない。拾ったからといって収めるわけではない。 電子版の便り 3 本は 2 つのソースから来ている。SemiAnalysis が 1 本、Gary Marcus の Marcus on AI が 2 本(同じ理屈で、ここでの 3 本は昨夜実際に読んだ量であり、下の名簿にある「電子版の便り 46 誌」は本紙が長く追いかけている総数になる。母集団が違う)。あの 77 アカウントのうち、投稿がいちばん多いのは @bhorowitz の 26 件、@teortaxesTex の 23 件、@GaryMarcus の 15 件、@deanwball の 14 件、@Miles_Brundage の 12 件。そして今日ただ一つ抜き出して今号に書いたのは、@dnystedt の 9 件になる——投稿の量では 9 番目で、いちばん多い人ではない。 昨夜は 748 個の追跡アカウントから 290 件のオリジナル投稿を引いた(リポストと返信は最初から名簿に入っていない)。748、77、290 の三つは、別々のものを測っている。 748 は名簿にあるアカウントの数、77 は昨日実際に投稿のあったアカウントの数、290 は件数だ。足しも割りもしない。今号で使ったリンクをたどれる外部の領収書は 16 件になる(本紙自身の採点方法のページと過去の号へのリンク、それに上に挙げたアカウントのリンクは数に入れない)。

今日あなたが手にできないもの。 七つ、正直に書く。一つ、今日あの計測にかかわる判断はすべて、無料の公開の部分の上に立っている——文末の「Read more」より後ろの有料の部分を、本紙は読めていない。方法論の掘り下げも、再生の枠組みの細部も、各社の過去の性能の曲線も、その後ろにある。二つ、売上のあの数字を、本紙は二次の引用でしか手にしていない。 FT の原文は有料の壁の向こうで、逐語の全文は取れていない。三つ、今号にマクロ経済の段はない。 昨夜、新しい公的なマクロ経済の統計が入らなかった。古い数字を寄せ集めて一段にはしない。四つ、今号に趨勢の系譜の段もない。 手元で使える系譜の素材は、もう期限切れになるまで置いてしまった。今日の新しい材料もあの線につながらず、無理につなげば紙面のためにつなぐことになる。五つ、今号はプロダクト動向の欄がない。 ここ 48 時間、プロダクトの会社の新しい記事がなく、本紙はすでにある製品の機能の紹介をニュースとして扱わない。過去の洞見の欄(振り返り)も今号はない。 使える古い素材を使い切った。すでに出した条目を流し直すくらいなら、本紙は空けておく。六つ、前書きと図一枚しか取れていない記事が一本ある。 Gary Marcus の「さらに悪い知らせ」の記事で、本文は「Read more」より後ろにあり、本紙は読めていない。だから何を論じているかさえ書いていない。これは取り込みの側が壊れているのであって、読んだうえで重要でないと判じたのではない。 すでに直すべき項目として挙げてある。七つ、今日は新しい深掘りレポートがない。 いちばん新しい一本は 8 月 21 日のもので、本紙は古いものを持ち出して紙面を埋めない。

補った古い資料。 今号は、人手で一度に足したソースがない。長く少しずつ補っているあの一群(7 月 1 日から。上の 24 時間には数えていない)は断面になっている。学術論文と X の投稿は 8 月 23 日まで、ブログと業界の電子版の便りは 8 月 22 日まで、会社の届け出は 8 月 16 日まで。業界分析とポッドキャストの書き起こしはどちらも 7 月 7 日で止まり、マクロ経済は 7 月 22 日の一日ぶんだけ、サプライチェーンの情報は 7 月 4 日の一日ぶんだけになる。誤読を避けるために書いておく。 補いが 7 月で止まっていることは、その線が昨夜さらえなかったことを意味しない。定例と補いは別の管路であり、断面が生じているのは補いのほうだけだ。

ソースの集中度についての注意。 今日帳簿に収めた 14 件のうち、12 件が二つの外部のソースから来ている——あの調査機関が 7 件、あのサプライチェーンの記者が 5 件になる。今日は「多方面の兆しが示している」日ではない。二つの材料がそれぞれ厚かった日だ。 だから本紙は今号のどこでも、そういう言い回しを使っていない。二つの割り引き方も違う。調査機関のほうは、同じ記事の別の断面であり、互いの裏づけにはならない。割り引きの理由は、計測した当人が自分の計測を報告していることと、評価された双方と往来があることにある——ただし、ほかにない加点が一つある。開いたものがオープンソースで、第三者が持ち帰って再実行できる。これは割り引きの一部を相殺する。記者のほうは同じ記者の同じ日の伝聞で、本人が「メディア報道」「伝聞」と札を立てている。割り引きの理由は、二段の伝聞と、台湾のサプライチェーン報道が値段の交渉のために情報を流す生態にあることだ。同じ日に収めた三本の線に、三つの違う証拠の等級と、三つの違う使い方がある——この等級分けそのものが、本紙があなたに渡したいものになる。

本紙が追いかけているソース。 名簿は重複を落として、名前のある発言者 529 人を覆う。管路の側は別の勘定で、ソース記録は合計 645 件ある。X のアカウントが 302 個、ポッドキャストが 90 番組、媒体とニュースリリースが 51 社、論文の書き手が 48 人、ブログが 48 個、電子版の便りが 46 誌、決算と決算説明が 26 件、基調講演が 23 回。ほかに YouTube が 4、オンライン講座が 2、書籍が 2、公開書簡が 1、社内文書が 1、政府文書が 1 ある。645 と 529 は同じものを測っていない。 同じ人が X にアカウントを持ち、本も出し、ポッドキャストにも出ていれば三回数えられる。645 が数えているのは記録、529 が数えているのは人であり、二つの帳簿は足さない。同じ理屈で、昨夜実際に拾いにいった 748 個のアカウントも、名簿にある 302 個の X のソースとは一致しない。母集団が違う。このほかに 77 個の機関型のソース(会社と機関の公式ブログ)がある——⚠️ この 77 と、上の「昨夜 77 個のアカウントが投稿した」は偶然の一致で、互いに関係がない。ここで数えているのは名簿にある機関の数、上で数えているのは、昨夜実際に産出のあった X アカウントの数になる。機関のほうは機関を数えていて個人ではないので、上の 645 には合算しない。代表的な名前を挙げる。X には Lucas Beyer、Sergey Levine、Arvind Narayanan。電子版の便りには Zvi Mowshowitz、Dean Ball、Ian Cutress。論文には Ion Stoica、John Jumper、Yann LeCun。ポッドキャストには Satya Nadella、Sam Altman、Demis Hassabis。機関のブログには SemiAnalysis、Data Center Dynamics、More Than Moore がいる。


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本紙はニュースのまとめではありません。毎日の AI 情報の流れから、本当に重要な洞察と、長く追う値打ちのある目利きの判断をすくい上げ、それぞれをどう検証したかまでお見せします——焦点は常に「どの判断が硬くなったか、誰の読みが当たっているか」であって、「今日何が起きたか」ではありません。

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