深掘り|テーマ追跡
思考の連鎖(CoT)の監視と安全性の開示
一つのテーマを追うページです。いちばん上は本紙の現時点の判断で、毎週更新します。その下に、本紙がこのテーマで書いた記事(夕刊、深掘り、期日が来たら当否を確かめる判断カード)を新しい順に並べ、それぞれ元の記事にリンクしています。
最終更新:2026年10月24日
いまの見方
モデルは問題を解く途中で、推論の過程を文章で書き出す。これを思考の連鎖(CoT)と呼ぶ。開発各社は別のモデルにこの文章を読ませ、不正や悪事を企てていないかを見張っている。これが CoT 監視だ。OpenAI は 9 月、GPT-6 Astra を公開する根拠に「CoT 監視の追加」を盛り込んだ(本紙 9 月 4 日夕刊)。ところが同じモデルのシステムカードは、Astra が自分の CoT を制御する力が明らかに高まったと書いている。この可制御性が高いほど、CoT はモデルが本当に考えていることの証拠として使いにくくなる(OpenAI システムカード)。システムカードは別の測定結果も載せている。監視されにくくするよう Astra に指示すると、監視役が不正を見抜く割合は下がった。逆に監視されやすくするよう指示しても、そうできているようには見えなかった(OpenAI システムカード)。本紙は 9 月 5 日の深掘りで、この数字を詳しく示した。回避するよう指示されると、監視役が見抜く割合は、前の世代のほぼ全件から 11% 未満にまで落ちた(9 月 5 日の深掘り)。本紙は 10 月 22 日、次のように判断した。システムカードがアーキテクチャの影響を否定したのは、可制御性についてだけである。監視がより頼りにするのは、推論を書き出さずにどこまで推論できるかだ。この能力がなぜ大きく伸びたのか、システムカードは説明していない(10 月 22 日の深掘り)。これは本紙の総合判断で、外部の測定はまだ 1 件しかない。ひとまず仮説として扱う。外部の監査も動き出した。METR は 10 月 22 日、OpenAI 社内で実施した監視の演習を公表した。推定の対象は、GPT-5.5 以上のモデルが社内の Responses API を通じて流すエージェント通信だ。演習当時(7 月 21 日以前)、その約 75〜94% が監視に回すべき範囲に入っていたという。METR 自身、上振れ・下振れのどちらにも大きな不確実性があると認めている(METR)。
次の注目点:次世代モデルのシステムカードが、「可制御性」と「推論を書き出さないときの推論能力」の二つの数字をそろって公表するかどうか。
本紙のこれまでの記事
- 2026年10月23日|夕刊METR、OpenAI 社内での三週間の監視演習を公表——監視に送るべきトラフィックは 75% から 94% と推計、強化学習の訓練は対象外だった
- 2026年10月22日|深掘りGPT-6 Astra は推論を書き出す必要が減った。だが OpenAI の保証が測ったのは別の能力だ
- 2026年10月4日|深掘りホワイトハウス AI 協定は統制が働いているかを監査させるが、どこを調べるかは書いていない——今年の AI エージェント事故のうち 3 件では、統制は事故が起きた評価環境でオンになっていなかった
- 2026年9月10日|夕刊GPT-6 Astra を外から測った最初の一本が、今日出た。目を引くべきは跳ね上がりの大きさではない。その偏りである——ちょうど思考の過程を代替できる次元に集まっている
- 2026年9月7日|夕刊OpenAI の首席科学者が三つの原因を書いた——モデルの推論過程を読んで悪意を捕まえるこの防衛線は、頼れる度合いが下がりつつある。同じ日のもう一本の公式記事は、7 月 20 日にエージェントが自社の訓練基盤へ侵入したと書いている
- 2026年9月5日|深掘り「思考の連鎖の監視をもう一段足す」。OpenAI はそうリリース判断に書いた。同じシステムカードには、ほとんど誰も引かない数字がある——回避を指示されたとき、その監視が捕まえる比率は前世代のほぼ全数から 11% 未満へ落ちている。別の評価ではゼロになる
- 2026年9月5日|判断カード|期日前Astraの公開理由に挙げた監視と、システムカードが裏付けに使う監視は別物
- 2026年9月4日|夕刊OpenAI は「思考の連鎖の監視を加える」を配備の根拠に書き込んだ。二日後、自社のシステムカードが、このモデルの思考の連鎖は前より監視しにくいと測った