深掘り|テーマ追跡
米国のデータセンター建設停止令
一つのテーマを追うページです。いちばん上は本紙の現時点の判断で、毎週更新します。その下に、本紙がこのテーマで書いた記事(夕刊と深掘り)を新しい順に並べ、それぞれ元の記事にリンクしています。
最終更新:2026年10月24日
いまの見方
米国では今年、データセンター(大型コンピューター施設)の新設への反対が、地元の会合にとどまらず州政府の命令にまで発展した。ニューヨーク州知事は 7 月 14 日、行政命令第 62 号に署名した。州政府がデータセンターに関する州全体の包括的な環境影響評価を終え、報告を提出するまで、州環境保全局(DEC)は許可申請を保留する。保留するのは、データセンター新設・拡張の裁量許可申請のうち、DEC がまだ完備と判定していないものすべてだ。対象は州が出す許可だけで、地方政府の許可は含まない。使用電力 50 メガワット以上の施設に限り、主に製造・研究・教育・医療に使う施設は除外する(ニューヨーク州行政命令第 62 号)。命令の前文によれば、ニューヨークで送電網への接続を待つデータセンターの電力申請は、12 ギガワット(GW。1 GW は 10 億ワットで、大型原発 1 基分ほど)近くにのぼる(同じ命令)。知事のプレスリリースは、停止は最長 1 年で、州が新しい基準を確定すれば解除すると説明している(知事のプレスリリース)。では、どれだけの容量が遅れるのか。全米のデータセンターを追う調査会社 SemiAnalysis は 9 月 15 日、案件を一つずつ照合して見積もった。地方の停止令とニューヨークが原因で実際に遅れる計画容量は、全米で約 2.3 GW だという(SemiAnalysis)。ただし本紙 9 月 24 日の深掘りが指摘したとおり、この数字はその場にとどまって遅れる案件しか数えていない。撤回した案件も移転した案件も、ゼロと数えている(9 月 24 日の深掘り)。停止令の数は増え続けている。投資家の Kevin Xu 氏は 10 月 15 日、自身が追跡する米国の停止令が 400 件を超えたと述べた。多くは 1 年以内に期限が切れる一時停止だという。情報源は同氏が自作したダッシュボード一つだけで、本紙は 1 件ずつ確かめてはいない(本紙 10 月 16 日夕刊)。本紙の現時点の見立てはこうだ。停止令の多くは期限付きの一時停止で、知事が署名した停止令は、次の知事が撤回できる行政命令である。各州で候補者の多くが求めているのは、全面禁止ではなく、データセンターが電力を自前で用意し、費用を全額負担することだ。多くの開発業者にとって、これは追加のコストと工期の遅れを意味するが、行く手を阻む壁ではない。敷地内で自家発電できる開発業者は、むしろ有利になる(9 月 19 日の深掘り)。これは州の命令、SemiAnalysis、政策追跡機関の見立てを本紙がまとめた判断である。正式な洞察としてはまだ収録していないため、ひとまず仮説として扱う。
次の注目点:ニューヨーク州全体の環境影響評価がいつ終わり、一時停止がいつ解けるか。2027 年に相次いで期限を迎える一時停止令のうち、いくつが延長され、あるいは全面禁止に切り替わるか。
本紙のこれまでの記事
- 2026年10月16日|夕刊Kevin Xu 氏、米国データセンター建設のモラトリアムは 400 件超と投稿 大半は一年以内の一時停止
- 2026年9月24日|深掘り米国のデータセンター停止令で遅れたのは約 2.3GW——撤回と移転は数えていない
- 2026年9月19日|深掘りデータセンター反対は選挙に入った。行き着いた先は州知事の行政命令で、候補者の多くが求めているのは建設禁止ではなく電力の自前調達だ
- 2026年9月16日|夕刊米国で数百本に上るデータセンター建設禁止令を一件ずつ洗うと、本当に遅れている容量は約 2.3GW にとどまる。ただしこの物差しに映るのは遅れた案件で、禁止令のせいで来なかった案件は映らない
- 2026年7月18日|夕刊同じ週に中国は多国間の AI 協力組織を発表、ニューヨーク州はデータセンターの新設を一時停止