SecondSource一次情報から判断を組み立てる

METR は Anthropic モデルの能力の伸びが過去の約二倍だと推定し、最も有用とみた証拠の大半を同社が公開版に載せなかったと書いた

2つのパネルを左右に並べたコンセプトイラストで、各パネルの上端には METR と書かれた黒い横帯がある。左のパネルでは基線の上を斜面が左から右へ上がり、中ほどまでは緩やかなベージュのくさび形、その先はより急なれんが色の部分で、右端の平らな頂部に ANTHROPIC と書かれたノートパソコンが置かれ、右のパネルでは ANTHROPIC と書かれた札の下に EVIDENCE と見出しのある紙があって太い黒い帯と細い灰色の線が交互に並び、紙の右側に立つ濃い色の波打つ髪の人物が黒いマーカーを持ち、その先端を黒い帯の一本の右端に当てている。 画像内の文字:過去の約2倍 能力の伸び、METR の主観的推定。

AI の能力を専門に評価する非営利の METR は 11 月 5 日、Anthropic の AI 研究開発が AI によって速くなったかを評価する報告を二本出した(METR の評価、2026-11-05;METR の審査、2026-11-05)。本紙の推論:METR が最も有用とみた証拠の大半が公開版に載らなかったため、Anthropic のモデルを外部から評価する組織は、研究開発の加速が同社の安全基準を超えたかを知るのに当面 METR の判断に頼るしかない。

METR の約二倍は能力が伸びる速さで、Anthropic の基準が求める数字そのものではまだない。METR の判断では、今年 10 月時点の Anthropic モデルは、明確に定義されたタスクで能力が伸びる速さが 2024 年 3 月から 2025 年 10 月までの約二倍である。METR は、1.3 倍でも 3 倍でも驚かないと書いている。これは METR の参加者の多くによる主観的な判断だ。METR は、いまの加速の約八割が AI によるものと推測する。この八割は加速分に占める割合で、全体の速度に占める割合とは別物である。Anthropic が定めた安全規則「責任あるスケーリング方針」の基準は、二つの条件を求める。能力の進展の速さが AI の大きな貢献がない場合の二倍に達すること、そしてその倍率を研究開発の自動化に帰せることである。METR は、評価報告がこの基準を個別には扱っていないと明記している。

Anthropic が 7 月 15 日に基準を超えたかを自己評価した内容について、8 月のリスク報告の公開版は非公開版より言い切っている。自己評価の指標は二つある。一つは先行指標で、モデルの能力より早く加速を映す。公開版はこの種の指標を二倍未満と書く。METR は非公開版からそのうち一つを約 1.97 倍と算出し、「約二倍」と書くほうがよいと考えた。もう一つは AI の支援がない場合との比較である。公開版はまだ二倍に達していないと書く。非公開版は二倍をわずかに下回ると書き、超えているとみても筋が通るとも書く。METR は、当時基準を超えていたとの見方も成り立つと考える。ただし、この件に関わる METR と Anthropic の研究者の多くは、なお超えていない側に傾いている。METR も破滅的なリスクは低いという見方に同意している。

Anthropic は非公開情報を公開版から一方的に省く権限を持つため、これらの倍率は公開資料からは計算し直せない。METR によれば、Anthropic は METR が最も有用とみた証拠の大半を公開版に載せなかった。理由は、ほかの開発企業の助けになりかねないことだという。このため外部は、望ましい水準以上に METR の判断に頼ることになる。Anthropic の 11 月 2 日の上場申請書修正版は、社内の推定と将来のモデルへの見通しから、この基準にまもなく達する可能性があると書く。同社の現在のモデルが超えたとはまだ判定されていない。申請書の同じ段落は、Anthropic が過去に、加速が起きたあとで初めて気づいたことがあるとも書く(Anthropic S-1/A、2026-11-02)。

まだ言えないこと: 二本の報告は同じ著者によるもので、独立した第二の証拠はない どう確かめたか →

識者の見方 · Daniel Kokotajlo(シナリオ「AI 2027」の共著者;利害:公開の開示は見つからない):「IF (big IF) Anthropic really is imminently about to meet the RSP threshold of 2x acceleration over baseline, then it seems timelines to full RSI and superintelligence may be very short indeed.」(Daniel Kokotajlo、2026-11-03)Kokotajlo 氏は、Anthropic が本当に二倍の基準にまもなく達するのならという大きな仮定つきで、完全な再帰的自己改善と超知能までの時間はきわめて短いかもしれないと述べた。この投稿は METR の報告より前のものである。

次に注目するのは、Anthropic の上場書類の次の修正と、同書類が公表するとした後続の報告である。期限は本紙が定めた 2027 年 3 月末とする。2027 年 3 月末までに Anthropic 以外の組織が、外部で照合できる証拠で同社のモデルがこの基準を超えたかを公に判定すれば、外部の評価組織が METR の判断に頼るという推論は改める。METR が今回、非公開の証拠にもとづいて出した判定はこれに数えない。

出典と検証

この記事は2026年11月6日の夕刊に掲載されました(同じ号にほか 17 本)。確認の経緯、引用の照合、その日に確認できなかった資料は、その号の本日の検証にあります。

この記事を引用

SecondSource(2026)「METR は Anthropic モデルの能力の伸びが過去の約二倍だと推定し、最も有用とみた証拠の大半を同社が公開版に載せなかったと書いた」https://secondsource.io/ja/news/2026-11-06-1/ (閲覧日閲覧)